アナリストは縁の下の力持ち!〜スポーツ選手の気づかせ屋〜

田中

今回は野球の分析をお仕事にしている田原康寛さんにインタビューしました。

田原さんは元GAP(Golden Age Project)メンバーで、現在、トヨタ自動車硬式野球部アナリストとして活動しています。

インタビューは大きく分けて「田原さんについて」と「アナリストとはどんな仕事なのか」という2つのトピックに分類して質問させていただきます。

よろしくお願いします。

田原さん

よろしくお願いします!

田原さんについて

田中

まず初めは「田原さんについて」の質問をしていきます。

アナリストを目指したきっかけは何なのでしょうか。

田原さん

原点は私の父親がバレーボール日本代表のアナリストとして帯同していたことだと思います。

当時の分析はコンピュータもなく、全て手書きで行われていて、その話を子供ながらに聞いて「へえ」と思ってました。

次に、自分がずっと野球をやってきたから、ざっくりだが野球に関わりたいと思っていて、その中で大学時代に「マネーボール※」という映画に出会いました。

そういうのを観たのと父親の経験が紐づいて目指し始めたのが原点です。

※アメリカの弱小野球チームのゼネラルマネージャー(GM)が統計学を用いて経営危機に瀕した球団を再建する姿を描く映画。

田中

なるほど。お父さんは凄い方ですね。

田原さんはずっと野球を続けてきたのですか。

田原さん

選手として高校までですけど、その後も野球が好きだったので、野球に関わりたくて最初はトレーナーを目指していました。

選手としてはあまり活躍できなかったですが…

田中

今、トレーナーを目指していたというお話が出たと思うんですけど、どうしてトレーナー志望からアナリストへなろうと思ったのですか。

田原さん

正直、大学入るまでアナリストという仕事を知らなくて、周りの友達にトレーナーを目指している子が多く、勉強をし始めたのがトレーナーを目指したきっかけです。

その時に「マネーボール」を見てアナリストに興味を持って、このような野球との関わり方もあるのだとも知りました。

同時期に、トレーナーでこの先食べていける自信がなく、他の道を探していました。

田中

なぜトレーナーとして食べていけないなと思ったのですか。

田原さん

自分の強みが見つけられなかったからです。

周りにトレーナーをしていて生き生きしている人が多くて劣等感を感じていました。そこで、自分に向いていることを探し始めるのに切り替えました。

しかし、今でもトレーナーの知識はスポーツ業界にいれば自然と聞くので、その時に活きていますよ。

田中

トレーナーの知識も生かされていて良いですね!

アナリストという職業を知ってから学生時代から分析などをしていましたか。

もし、やっていたらどんな分析か、どんな方法で行っていたのかも教えてください。

田原さん

初めて分析したのが大学の卒業論文で、大学院生に教えてもらってWebサイトから引っ張ってきたデータをもとに、簡単な統計分析を行ったのが1つ。

さらに、4年生の頃に自分の大学の男子バレーボール部のアナリストというかお手伝いをさせてもらって、そこでアナリストという経験を初めてしました。

特にこだわって分析をしていた訳ではなかったです。

田中

男子バレーボール部のお手伝いもされていたのですね!

お手伝いをするようになったきっかけは何ですか。

田原さん

きっかけはひょんなことで、短期留学をした際に、大学の国際センターにバレーボール部の監督が働いていまして、

その人は元日本代表に選ばれている方で、聞いたら父親とも知り合いだとか。

そこでたまたまアナリストを募集している張り紙がされていて、「今募集しているんですか?」と聞いてみたらお手伝いすることになりました。

田中

ありがとうございます。偶然が重なって起きた出来事なのですね。

実際にアナリストになって良かったことは何ですか。

田原さん

まず目標であったアナリストになれたこと自体が嬉しいです。さらに見てきた選手がプロになったり、

日々、選手の練習や自主練の様子とか見ることが多いからこそ、チームが勝つことが率直に嬉しいし、やりがいを感じます!

田中

ありがとうございます。

田原さんは夢を叶えたのですね。素敵です!

田原さんにはいろんな転機があったと思うんですけど、一番のターニングポイントは何ですか。

田原さん

学生時代に偶然が重なったので、一番と決められるターニングポイントはないかなと思います。

強いていうなら、トヨタ自動車のアナリストを引き受けるか迷ったことですかね。

オファーをもらってから二つ返事で「はい行きます」とはならなかったです。

田中

どうして迷ったのですか。

田原さん

元々、プロ野球でアナリストをしたくて、そのために大学院に行って博士課程に今も在籍しているんだけど、

ざっくり言うと、博士課程で先に博士を取った方がいいのか、現場で経験を積んだ方がいいのかも迷っていました。

いろんな人に相談したけど、五分五分でより悩んでしまっていましたね。

田中

迷いながらどうして今の決断をされたのですか。

田原さん

チャレンジしたきっかけは、自分は「人との縁」を大切にしていて、トヨタ自動車の前アナリストの方から自分の能力を必要としてくれたから、そこで働いてみようと決心しました。

だから、その方との出会いが1番のターニングポイントだったのかなと今思います。

田中

良いお話が聞けて良かったです!ありがとうございます。

GAP(Golden Age Project)を卒業されたと思うんですけど、GAPに入って一番経験になったことは何ですか。

田原さん

これには明確に答えがあるんだけど、GAPのミーティングの初めに行っていた「人間力ワーク」をやっていたことだと思います。

当時はなんとなくやっていて意味あるのかなとずっと思っていました。学生からしたら、答えづらいお題ばかり出てきて、抵抗が少しありました。

けど、社会人になって思うのは「人間力ワーク」が凄い大事だったなと感じている。

今めっちゃ活きていて、自分だったらチームという組織に入っていて、いろんな問題が起きた時に自分の意見を発言を求められる機会が多くて、ふと思い出すとあれやっておいて凄く良かったな。

自分の意見を言語化して人の前で話すことは、学生は元より社会人でもなかなか難しいことだから、個人的に経験として良かったと思います。

田中

人間力ワーク」とは具体的にはどういったことをしていたのですか。

田原さん

例えば、初対面の人とペアになって、自己紹介1分間して、その人のことを褒めてください、みたいなことをしていました。

なかなか初対面の人を褒めろっていうのは難しいけど、そういうのを見つけようとするマインドを意識的に考えるワークが多かった気がします。

1つのことについてみんなで考えていろんな意見をシェアするものだったかなと思います。

どんな意見でも共有することは大事ですよね。

アナリストとはどんなお仕事?              

田中

ありがとうございます。僕もいろんな人に聞いてみたいと思います。

ここからの質問は「田原さんについて」から「アナリストとはどんな仕事なのか」を聞いて行こうと思います。よろしくお願いします。

最初に「アナリスト」を知らない人も多くいると思うのですが、アナリストとはどんな職業ですか。

田原さん

一言で表すと気づかせ屋だと思っています。

練習の映像やボールの回転数など分析したものを選手にフィードバックして、日々の変化点に気づかせることができるのがアナリストの仕事だと思います。

さらに、分析したデータで資料を作成してデータの見える化をしたり、試合相手の映像データ、相手ピッチャーや打者の特徴などを分析して共有したりします。

田中

ありがとうございます。気づかせ屋の存在は大きいですね。

アナリストはいろんな競技に取り入れられていますが、野球ならではのアナリストの特徴はありますか。

田原さん

やっぱり野球だとボールの速度・回転数の他に、野球でしか使われない伸び・キレ・クセとかをわかっていないと説明できない内容が多いんです。

ざっくり言葉はわかると思うんだけど、その伸びって何なの?っていうのを数値化してあげれるのは野球のアナリストだけかなと思います。

田中

ありがとうございます。野球経験はこういうところで生かされているのですね。

次に、チームの試合も分析すると思うんですが、野球のアナリストはどこの位置から分析を行いますか。

授業で学んだのですが、バレーボールはコートの真後ろ、ラグビーは上空から映像を撮っているらしいので、野球も知りたいです。

田原さん

試合だと野球はバックネット裏から映像を撮りながら分析してます。

今ではパソコンで1球ごとに入力できるソフトがあるので、それを映像と入力データを利用して分析します。

今では分析は専用のソフトで簡易的になってきています。

田中

ありがとうございます。もっとアナリストが普及すると良いですね。

アナリストが直接選手に指導することはありますか。

田原さん

基本的にはコーチと一緒に指導することがほとんど。

選手から指導を求められた時などは指導をすることがあります。

その時に野球のことを理解していないと話できませんし、選手たちも耳を傾けてくれません。

あとは、自分が分析をして気づいたことは言ってあげるようにしています。

コミュニケーションは多く取るようにしてます。逆に、選手たちにこっちから質問をすることも多々あります。

田中

ありがとうございます。

良い距離感があるのですね。とっても参考になります。

田原さんが考える、アナリストになるために必要なスキルはありますか。

田原さん

そのスポーツのことをどれだけ熟知しているかが重要。専門知識を知らないと分析はできないし、選手も聞き入れてくれないんです。

アナリストの中で、全ての分析をできる人はほとんどいないし、取れるデータが多くなってきている今、それをデータ処理する人も必要となっています。

だから、細分化(役割分担)が進んでいます。つまり、自分は何に対する分析が得意なのかを把握しておくと有利だと思います。

アナリストになるなら、データを数値化して処理できる能力が必要不可欠ですから、なんでも良いからデータを取って分析してみてください!

あとは選手とのコミュニケーション能力も必要ですね。

田中

AIが進んでいて、アナリストが関与することは減ってきているのですか。

田原さん

データを取る自動化がかなり進んでいます。AIが予測をしたものは結局「」が判断しなければならないです。

いくら自動化が多くの数値が出ても、それを噛み砕いて翻訳するのはアナリストじゃないとできません。

コーチや監督にこういう数値が出ました、と提示しても使ってくれません。こういう数値にはこういう意味があってこの数値が出ました、と説明してあげないと使えるデータにはならないんですよね。だから、アナリストが必要になっています。

参考までにトヨタ自動車のアナリストは2人、プロ野球は基本的には3人で、データに強い球団で約10人ほどいるみたいです。

田中

ありがとうございます。これからアナリストはどんどん必要とされてきているのですね!

次に、今後の目標を教えてください。

田原さん

最初からの目標であるプロ野球かメジャーリーグで、アナリストとして活動したいと思っています。

球団は特にこだわりはなくて、

今自分の強みをチーム内で模索していて、どうやったら強みを生かして起用してもらうかを考えているところです。

アナリストを目指している学生へ!           

田中

ありがとうございます。田原さんの夢を応援しています!

最後に、

学生に向けて一言お願いします。(アナリストを目指している学生へ

田原さん

アナリストになる機会があれば、今すぐチャレンジしてほしいです。

もしチームにアナリストがいなくて本当になりたかったら、なんでもいいから自分でデータを取ってみて、その選手、コーチ、監督に提案してみてください。

提案することは、アナリストとして必要なスキルでもあるので、思い切って一歩踏み出してほしいと思います。

その中で専門知識について誰よりも知っているとか、何かしらの強みを見つけるきっかけになると思っています。

田中

ありがとうございます。多くの学生に伝えていきたいと思います。

これで質問は以上となるのですが、個人的な質問を一つさせてください。

多く知られているのは「アナリスト」という呼び方なのですが、トヨタ自動車硬式野球部のプロフィールには「アナライザー」と記載されていました。

どちらが正しいというのはありますか。

田原さん

「アナライザー」は社会人野球のみでしか使われていないのではないかと思います。

今は細分化されているので、ビデオコーディネーター、テクニカルコーチなどと呼ばれたりもしています。

世間一般では、「アナリスト」の方が多く使われていると思います。けど、どの呼び名の人もやっていることは同じですから(笑)

田中

今回の記事は「アナリスト」で統一して記載させていただきます。

インタビューは以上となります。

本日はありがとうございました!

田原さん

ありがとうございました!

田中

スポーツ業界には非常に多くの職業の方が混在していて、アスリートたちをサポートしています。その中の「アナリスト」にスポットライトを当て、アナリストの必要さがわかりました。これからのスポーツ業界には、アナリストはもっと必要ですし、いろんな競技、いろんなチームに普及してほしいなと思っています。

この記事を多くの人に読んでもらい、「アナリスト」について少しでも興味を持っていただければ嬉しいです。

田原康寛( Yasuhiro Tahara)

  • 中京大学スポーツ科学部卒
  • 筑波大学大学院体育科専攻 修了
  • 筑波大学大学院体育科学専攻 在学中
  • トヨタ自動車硬式野球部 アナリスト(2020~)

トヨタ自動車硬式野球部のアナリストとして2020年から活動している。日頃から選手たちの練習に付き添い、選手のすぐそばでサポートをしている。アナリストは監督、コーチたちと並んで、チームの強化に尽力している。